狂犬病のワクチンを接種してきた
12月11日

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 カオサン通りの近くを歩いていたときだった。路上で空き缶で作ったトゥクトゥクを販売している男がおり、3匹の犬を従えていた。僕はその近くを通りがてらにそのうちの1匹の犬を撫でた。はじめは尻尾を振って喜んでいたのだが、少ししてガルルルルと唸り声をあげる。そして僕の手にパクッと噛み付いてくる。

 危ねえ!

 僕は咄嗟に手を引っ込めた。間一髪だった。タイで犬に噛まれたら大変なことになる。タイにはまだ狂犬病が残っている。感染して発症したら致死率ほぼ100%の恐ろしい病気だ。

 いやあ、危なかったなあ……と歩きながら、噛まれそうになった右手首のあたりを見てハッとなった。針の先で引っかいたような小さな傷。血もわずかに滲んでいる。顔からさあっと血の気が引いていった。

 犬の飼い主らしき男のところに戻って訊いた。

「この犬はちゃんと狂犬病のワクチンを接種してる?」
「ああ、もちろん」
「本当に? さっきこの犬に噛まれたんだけど」
「大丈夫だよ。問題ない」
「本当に本当に本当に大丈夫?」
「そんなに心配なら、ほら」

 男は僕を噛んだ犬を膝に抱きかかえると、頭を叩いたりしてわざと怒らせる。そして犬がガルルルルと唸り声をあげたところで自分の腕を犬の口元にもっていった。ガブリと噛みつかれた。甘噛みなんてレベルではなくけっこうな本気噛み。もしこの犬が狂犬病だったらこの男も間違いなく感染していることだろう。

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「な? ぜんぜん大丈夫だろ?」

 僕はそれを見てホッと一安心した。しかし、うちに帰って寝床についたところでふと思った。

 ちょっと待てよ。あの男が犬に噛まれても平気なのはすでに狂犬病のワクチンを接種しているからじゃないのか? そう考えると、また怖くなってきておちおち寝てなんていられなくなってしまった。布団から起きてネットで狂犬病についていろいろと調べてみた。

 あるサイトには「バンコクでは狂犬病の患者は毎年ひとり出るか出ないかくらいまで減ってきている」と書かれていた。なーんだ。毎年ひとり出るか出ないかってそんなの宝くじで一等当たるよりも低い確率じゃん。僕は大丈夫だな。よかった、よかった。……いや、でも、待てよ。それは犬に噛まれた人がきちんとワクチンを接種していたからじゃないのか?

 さらに調べてみた。狂犬病に感染した犬の特徴について。「よたよたと歩き、口からはよだれをダラダラと垂らし、攻撃的で誰にでも見境なく噛み付くのが特徴」らしい。あの犬はぜんぜんそんな感じじゃなかったから大丈夫だな。よかった、よかった。……しかし、また別のサイトにはこんなことが書かれていた。「狂犬病に感染した犬のすべてがそのような症状になるわけではなく、うつ気味でおとなしくなる犬もいます」。

 なんだよ、畜生! 僕の不安を煽るようなことを言いやがって!

 そんなに不安ならさっさと病院に行ってワクチンを打てばいいのに、と思うでしょ? でもね、狂犬病のワクチンって4000バーツもするんだぜ。たかが4000バーツ。されど僕にとってはとてつもなく大金の4000バーツだ。収入の3分の2を子供の養育費でもっていかれ、毎日カップラーメンと水で過ごし、たまの贅沢がムーピン(豚の串焼き)という僕にとって4000バーツがどれほどの大金か理解できるかい?

 ネットを見ていても不安になるばかりなので寝ることにした。大丈夫だよ、大丈夫。傷だってすごく小さかったし、あんな小さなとこからウイルスなんて入ってこれないよ。でも、絶対に大丈夫とは言い切れないだろう……。安心と不安の繰り返し。

 気づくと窓からはチュンチュンとすずめの鳴き声。そこでようやくひとつの結論に達した。狂犬病の潜伏期間は一般的に1~3ヶ月と言われている。3ヶ月を過ぎてもなんともなければ、まあ、たぶん大丈夫なんだろう。が、自分はもしかしたら狂犬病に感染していて死ぬのかもしれないという不安に3ヶ月間も怯えるくらいなら、4000バーツ払ってワクチンを接種してスッキリしたほうが絶対にいいわ。そして今月は水と塩だけで生活すればいいじゃないか。

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 BTSエカマイ駅近くのスクンビット病院を訪れた。この病院の前はこれまで何度も通ったことあるけど、中に入るにははじめて。高級ホテルのように豪華なつくりだ。やべーな。ここ高いんじゃねーの。

 受付で「犬に噛まれた」と伝えると、必要書類に記入してから2階の部屋に案内される。そこで血圧と体重の測定。そして医師との面談。この医師がすげー美人の女医だ。いつもだったらここでヒャッホーイ!とテンションが上がるところなのだが今はそれどころじゃない。とにかく一刻も早く僕を狂犬病から救ってくれって感じ。

「じゃあ、注射は別の部屋に移動してやってもらってね」

 美人女医が言った。あ、あれ、彼女が注射してくれるわけではないのか。クソ、どうせ注射されるなら美人に注射されたかったなあ……ってわかってるよ。今はそれどころじゃない。

 美人女医に指示された部屋に移動した。そこで診察台に寝かされ、ウィンウィーンと高さを調節され、噛まれた傷を消毒してガーゼを貼られる。ごっつい顔をした男の医師が訊いてきた。

「噛まれた場所は?」
「カオサン通り」
「誰の犬だ?」
「空き缶でトゥクトゥクを作っていた男」
「これまでに狂犬病のワクチンを接種したことは?」
「ない」
「ナンチャラカンチャラのワクチンは?」
「はあ? ナンチャラカンチャラ?」
「ええと、日本語でなんといったかな。あ、そうだ、ハショフー」

 ああ、破傷風か。そんなの小学生のときにワクチンを接種してるよ。必要のないワクチンまで打ってお金のない僕からこれ以上お金を巻き上げようったってそうはいかないぜ。というわけで、狂犬病のワクチンだけ接種してもらうことに。当然だ。

 左肩にチクッと注射してそれで終了。でも、狂犬病のワクチンは5回に分けて打たなくてはならない。なので、あと4回の通院。料金は初診が1800バーツで、その後1回ごとに650バーツ。トータルで4400バーツだ。ほーら、4000バーツを超えたよ。もういや!

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左肩にワクチンを注射

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針の先で引っかいた程度の傷なのに大袈裟なガーゼ

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お土産の薬もいっぱい。毎日飲めって

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狂犬病のワクチンは5回に分けて接種しなくてはならない。その日程表

 タイの保健省の発表によれば、タイでの狂犬病の患者数はここ数年で劇的に減ってきているという。が、それでもまだ撲滅したというわけではない。少年アジアを読んでいるよい子のみんなはタイでは絶対に野良犬に手を出したりしないように。もし噛まれてしまった場合は万一のことを考えて48時間以内に狂犬病のワクチンを接種してください。バンコクの総合病院だったらたぶんどこでも接種できるはずです。

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タイの野犬にはくれぐれもご注意を

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ライター:小林ていじ

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